心の領域に/
こたきひろし
心の領域に
不意に流れ込んだ水は渇いた土に滲み入って
冷たい情熱で蒸発した
過去から呼び掛けられて
振り返ると
その世界には陽炎が揺れていた
絶えず
時間にもてあそばれた
心の領域には
さびしい森があって木々が風に哭いていた
還りたい場所が見つからなくて
仰いだ空には
不吉な雲が立ち込めていた
いつか
心の領域を離れて
途に立てば
遠くに筑波の山が見えていた
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