あくび/ヒヤシンス
ピアノが奏でる森には妖精が住むと言う。
感情は朝の霧の中に紛れ、感性だけが宙に浮かんでいる。
僕は裸足で森を往く。
まだ影は存在しない。
清らかな冷気が辺りを包む。
冬の厳しい寒さの中で妖精はどこに潜んでいるのだろう。
静かに初夏を待っているのだろうか。
人々が足跡を残す初夏に。
立ち止まる人は己の内面へと深く、深く。
自分の色を持つ人は時に繊細で。
心穏やかに五月雨を待ち望むように。
光景の瞬間に足跡は残せない。
妖精はいまだ現れず。
思考の森の中で一人驟雨に晒されながら。
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