四郎ちゃん/もり
ます
私の鼻の穴を元どおり おもどしください」
サブちゃんの銅像はしばらくの沈黙ののち 口を開いた
「暗くてよく見えないんだが
よかろう。わざわざここまで
来てくれたんだ 私もイメージを崩したくない」
「ただ、そのまま小さくするだけではおまえは
またこのことを忘れるだろう」
「だから 小さな鼻の穴のようなほくろを そのあご先につけよう そしてそこから鼻毛のように毛を伸ばそう」
「その毛を刈るたびに、今日という日を思い出せ」
「ありがとうございます・・」
サブちゃんは
銅像もかっこよかった
おれは あご先の
ほくろとほくろ毛を受け入れ
それ以外は元の姿に戻り
わりと平凡な暮らしをするようになった
世間のいう 健やかな毎日を
鏡の前でたまに思い出す
笑うサブちゃんの鼻の穴に
吸いこまれそうになった
あのときの
胸の鼓動を
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