自分に関する限り/ただのみきや
 
別に天国の歌声に耳を奪われている訳じゃない
地獄の底から湧き上る苦悶の呻きに眠れない訳でも

聞いているのはこの世界 尽きることのないお喋りと
拮抗しながら 解かれて往く 形あるものの軋み

――ではなく その残響
暗く湿った洞窟に響くもの それが

涙とフライパンの甘い匂いに聞えても
工場で落とした指と鉄屑の焼ける匂いに聞こえても

「真実」という言葉は華美ではないが気品ある宝飾
自らに冠しない限り ましてや連呼しない限り

小賢しい猿が一匹 頭の中を騒ぎまくる
「自分」とはもう長い付き合いだ




             《自分に関する限り:2018年2月14日》








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