おもてなし妖怪2018/るるりら
黒ろうございました
黒い巨体を翻し 色めく水毬をかいくぐり
悠々ぱしゃりと海面を叩いたのが 昨日のことのようです
当時のわたくしは 詩がない一介の鯨でございました
びゅぅびゆぅと 空が鳴き ぐわんくわんと波のうねるその狭間に かすかに
ん〜 ん〜と 仲間の鯨の声が聞こえました。
人間のみなさまに解るように翻訳すると
悲し気なその声は海面一面に 油が浮かび
ちいさな炎が落ちてきたかと思うや否や
あたり一面 火の海になったという知らせでございました
ん〜ん? ん〜?と 必死に詳細を聞こうとしたのですが
聞けばきくほど 戦局の残酷非道さに聞いているだけで鯨骨が
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