のっぽのこ/黒田康之
 
小さな町の小さな家に
のっぽの君は生きていて
きゅうくつそうなテーブルで
ゆっくりポトフを食べている
小さな皿で二三杯
食べ終えると
君は背中を丸めて天井を見上げる

朝日の町の朝日の道に
のっぽの君は歩き出して
おだやかな太陽の光で
ゆっくりとゆうべの夢を燃やしている
大きな手で何回も
燃やし尽くすと
君は背中を丸めて靴紐をしばる

君が背伸びをすると
朝日が輝いたように見える
ゆうべの夢が風に舞って静かに土と空気にかえっていく
たくさんの小さな家から
君の深呼吸で
夜のさみしさもこわい夢も全部全部がかげろうみたいに燃えて
ひとりぼっちも怒りやなみだも
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