ひらきかけの箱/ただのみきや
 
澄み切った空 静かに
月の横顔の
化粧を落とした白さだけ
深々と冷気は立ち込めて

木々と木々の間を渡る
鶫や連雀の羽音は
はたはたと 重ねられ
地にふれず かき消され

今朝わたしのかまどに煙はなく
雪原のように覆われても隠しきれない
凹凸に仄暗い蒼さを添えている

見えるものすべて光の指摘を逃れ得ず
目を瞑れば示唆するものふたつ
もつれてまじる 色み異なる河のように

目覚める前の いつかの夢の
白紙の奥の 句点のない橋の
――鼻腔だけが現を吸って痛い




         《ひらきかけの箱:2018年2月7日》







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