のびていく豆苗の先はどれも、ふたば/そらの珊瑚
 
 ふたば

冬の午後
水に挿した豆苗を見ていた
光を食べたその植物は
飛べない二枚の羽を
明日へ広げる


 さよなら

星はどこへ還るのだろう
色あせていく夜空
朝の襲来


 まちあいしつ

「かみさま」と
患者を呼ぶアナウンスに
立ち上がる人をみなが見る
あの人が神様か。
まるで人間みたい。
そよぐささやき
病院で患者に様をつけるようになったのは
いつごろからだろう


 のろい

冬の呪いが溶けて
路上の手袋ひとつ覚醒した
やわらかく息を吹き返せば
捨てられた記憶も戻ってくる
かたわれは今どうしているだろうか
春は残酷だ
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