うつろな姫/ただのみきや
 
いまも本当は
あなたは在って
あなたは無く
うつろなままのたましいが
降り注ぐ 石ころや
土埃を外へ 外へと押し上げて
層をなし固まったものが
あなただと認識されているけれど
それはあなたの人生であってあなたではなく
あなたはいまも
蛹の中で夢を見て
羽化することもなく
あらゆるものに変身する
いつまでもあなたはたぶん
うつろなまま
普通人として
常識人として
人生を上手く着こなし 着くずし
生真面目に誰かを想いやりながら
歌い続けている 貪欲に
満ちることのないものを満たそうと
変わらぬ意思を保ったままで




                  《うつろな姫:2018年2月3日》









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