うつろな姫/ただのみきや
 
そのころ
あなたは在って
あなたは無く
茫漠と
靄につつまれて
あなたは


生への渇望と死への誘いが拮抗する最中
やわらかな被膜すらまだなく
渦巻く闇の限りない張力と
己が中心へと落下する引力に
引き裂かれ
広大なうつろ
曇天の空を
迷い鳥となって彷徨いながら
鳴き交わす相手を探していた


絶えず猟師たちの銃は成層圏から
生業ではなく快楽のために鉛の毒を浴びせかける
コンプレックスと
幼児的嗜虐性
膿んで腫れ上がった顔を
多数派の手ぬぐいの頬っ被りで隠す
ごくありふれた
少年少女たちが
弱者の手足を千切っていた


やがて朧な紙の翼は
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