微かな祈り。/梓ゆい
 
父がいなくなり
4回目の朝が来た。

冷たい空気の中
花瓶に活けたばかりの花に水滴が見え始めれば
荒れた手の甲の傷が
ほんの少しだけ痛くなった。

暖かな部屋に行こうとしても
目を閉じて眠る父の顔が蘇り
あの日と同じ畳部屋の真ん中で
私はずっと座り込んだまま。

写真の中
目尻を下げた父の瞳は
何か話がしたい。と
俯いた顔を覗き込んでいるかのようだ。

「お父さんおはよう。今日も寒いね。」

広い部屋に響く声は
投げたボールよりも早く
どこかに飛んで無くなった。



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