優しい殺し屋/まーつん
ばされた小鹿の死は
誰かの気晴らし
銀色に煌めく鱗の群れ
釣り上げるよりも共に泳ぎたい
そう思って飛び込んだ子供が
冷たい水に、切り刻まれた
それからというもの、誰にも、我が子を
船から飛び降りさせる勇気はなく
釣り針を投げるばかり
もう随分と長い間
神様が戻ってこない
この美しい緑の庭に
累々と横たわる獣の躯
楽園に咲き乱れる
死の花の間をさまよう
迷子の大人たち
どうしたらこの星を
逆に回せるだろう
どうしたら
すべての過ちを
無かったことにして
やり直せるだろう
銃を捨てた
優しい殺し屋が
血にまみれた手で抱きしめる
産湯から掬い上げた
新しい命を
優しい殺し屋に
抱きしめられるとき
君は泣くだろう
何故かもわからないまま
優しい殺し屋の指先が
君の頬を優しく撫で
血の跡を残す時
君は泣くだろう
何故かもわからないまま
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