そしてリビングには少しだけ埃が積りはじめている/ホロウ・シカエルボク
 
を着て、嘘ばかりの個人情報を渡して腕を組んで部屋を出る、女を先にタクシーに乗せてやり、自分はどこかで捕まえて、妻と子供が待っている高級タワーマンションに帰ると、当然のごとく二人はもう眠っていて、軽い食事がキッチンのテーブルに並べられている、レンジにも入れずに素早くたいらげてシンクに置くと、その日することはもうなにもない、キッチンの明かりを落とし、洗面で歯を磨く、規則的なブラシの音を聞きながらこちらをじっと見ているうつろな目に気づくとき、お前は初めて少しだけ虚しい気分になる。

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