ひとつ 痛み/木立 悟
瞳が何処かを巡っている
まばたきの度に新たに生まれ
暗がりに浮かぶ光の紋様
見つめては見つめては泣いている
吹雪 涙
同心円の羽の渦
ひらき ふるえ
問う
機械の作る水音が
窓の隅から入り込み
異なる器に満ちてゆき
異なる海に揺れている
風が言葉になるまでの
数十億年を曇に映して
凍りつづける足跡の列
行方知れない瞳の軌跡
低い雷光 無数の冬空
何も見えない隔たりのなか
廻す腕に絡みつくのは
誰かが名付けた午後の名前
痛みは昇る 軌跡は昇る
涙のなかに増えてゆくもの
地は燃え 火は皆
砕け 昇る
水の夜が水底を消し
どこまでもどこまでも沈むとき
火を見つめる瞳はひとつ
はばたきの渦にこだましてゆく
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