千の色に染まる水/まーつん
 
とは言えない
僕もまた、自分の心の色に染まっていて

だから、君のことを
好きになれるとは限らない

完全な愛を知るのは
完全な透明だけ

総ての色を受け入れられるのは
色を持たない透明さだけ

なにものにも染まらない水が
紅い怒りに蒸発し、蒼い冷静さに凍り、
黒い絶望と白い救いの間を
流れ落ちたり、遡ったりして
小さな滴の一つ一つに分かれながら
各々の色を見つけていく

人って多分
そんな生き物なのだ

丘に咲く一面の花は
好きな色で各々を着飾る

部屋の床を埋め尽くす
ガラクタの下から
僕だけに見える千の色
その総てを覚えてはいられないけど

あの花が着飾った色も
すぐに忘れてしまうけど
いつかまた思い出す時が来るのだろう

総ての心が流れ着く
あの場所で


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