のりしろ/藤鈴呼
 

駆け引きなんてウンザリなんです、と、涙を流し

流し目で見上げた瞳が一番艶やかだったから
もう 息も止まる程の美しさ 雅の意味を 視覚で知った

ここから三分間 目を閉じて見ましょう
その間の空気を 全て集めた容器を眺めながら 祈るのです

折り目正しい着物など 一度も羽織った事が 在りません
足袋を履く旅になど 出掛けなくても 分かります

どの道を進んでも 戻ることは 出来ないけれど 
進み方を変えることは 何時だって 出来ると信じて 

人生には「のりしろ」が きっと ある筈だもの。
今 一杯一杯でも 
余白がなければ 紙切れにしか なれないからね。


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