韻降る/中村 くらげ
 
ここは自由の部屋
障子の向こうからはこどもの声
明日が待ち遠しかった昨日
明日をうっとおしく思っている今日
ずっと温かいままの布団の中で
こんぴゅうたあに触れている指先だけが冷たい
定刻にやってくる食事たちを水で流し込み
げっぷを世に放つだけの簡単な仕事だ

ここは隔離された部屋
こっちにおいでよかわいい我が子たち
何でもできる気がしていた昨日
何にもやることがなくなった今日
うつるから近寄らないで!なんて言われちゃって
顔も見せてくれない家族たちは冷たい
カプセルと錠剤を一度に水で流し込み
病原菌を撒き散らすだけの役立たずだ



ここは韻の降る部屋
もとい隔離されたインフルの部屋

うまい言葉だなんて出て来やしない
ネットショッピングくらいしか出来やしない

そこで鳴りだすインターホン
だれかお見舞いにでも来たの?


あっ、クロネコヤマトさん ご苦労様です
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