「――?3」に寄せて/ただのみきや
しようとして したのではない
しようとしないからできること
いたるところに仕掛けた笑いの影で
逃げたのではなく逃がしたのだ
あなたはあなたを 作品の中へ
なに不自由なく澱んでいた
水槽から飛び出す夢を見て
夢の中 金魚は死んだ
抗う術もなく幼い頃に嵌められた枷
黒く魂を鬱血させた冷たい束縛から
解き放たれ
幸福の最中
遺言を残して
こころのままに愛し 世界を自由に泳ぐ
あなたの娘こそ あなたのメタファー
逃げたのではなく逃がしたのだ
そうしてあなたは作品の中から
今 わたしのこころ
考えるより 想うより
もっと 深いところ
春へ ああ 夏へ
激しさを増して往く
衝動――姿なき魚のふるえ
あなたは泉の女神のよう
失くしたものを再び
《「――?3」に寄せて:2018年1月17日》
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