狸の目玉/狸亭
 
人間はへんなことをする。
ぬけるような秋晴れの空だというのに
古いお城に集まって
中世の衣装を着て

お芝居が始まった。
しずしずと歩む男たちの
おそるおそる歩む女たちの
なんという白い表情。

舞台には
二つの飾りたてられた箱がならんでいる。
向かって左の箱が少し大きい
手品のように幕を開けると

左手の箱の中には男
右手の箱の中には女。
一段高い箱の左右に
無表情の男たちと女たちが別れてならぶ。

左手の箱の中の男が
紙をひろげる
おことば
誰が誰に対するおことばなのか

不思議な
言葉。
燕尾服を着た小柄な男が進みで出て
懐から紙を取り
[次のページ]
戻る   Point(2)