東京へは/こたきひろし
 

初めてだった女の粘膜に感激も感動もなかった
十九歳
すべてはマスターベーションの延長でしかなかった

十九歳
東京へはいったい何をしたくて地方から出てきたのか
解らなくなっていた

堤防の下の道についた
人の気配は感じられなかった
堤防への石の階段を上った、
河が蛇のように暗闇のなかでとぐろを巻いていた
遠くに電車の鉄橋が見えた
十九歳
両の眼に流れて落ちたのは
涙かもしれなかった

堤防の上の道を向かうから若い女が一人で歩いてきた
女は何ら警戒する事なく近づいてきた
暖かい風が吹いてきた
女の穿いてたスカートがヒラヒラしていた
すれ違った時に女が唾のように言葉を吐いた
「何じろじろ見てるのよ、あんたみたいな男に何もできるわけないでしょ」

十九歳
蛆虫のようにわいた妄想は東京の夜に飲み込まれた
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