東京へは/こたきひろし
この世界から悪はなくならない
同様に正義もなくならない
深夜の街を歩いていたのは望郷の想いに駈られていたからだ
東京は総武沿線の街、千葉に近い場所
夜も深まれば駅前の通りを歩く人はなくなっていた
通りを外れて河の堤防の方へ向かった
途中にある小さな工場までくると火の手が上がっていた
ただ事じゃない筈なのに
何だか夢を見ているようで、現実感が湧かなかった
そのまま関わる事なくその場から逃れるみたい足早に通り過ぎたのは怖かったからだ
十九歳
男として何とも未熟だった
十九歳
夜の街で童貞だけは卒業していた
十九歳
女の体と心の一部始終は何も知らなかった
十九歳
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