柔らかな感触の骨と身/こたきひろし
これから咲く花
もうすぐ終わる花
今は咲いている花
枯れ落ちた花
夕暮れ
帰路を急ぐ人で溢れていた駅
彼は自分を見失いそうになっていた
帰る家と帰る理由
は
解っていたつもりだけれど
胸の底から込み上げてきたのは空しさ
言葉にならない空虚
人が川みたいに流れていた
その流れに任せるように改札口をでる
それは
突き出た岩に流木が引っ掛かるのに
似ていたかも知れない
彼は足を止めて何気なく空を見上げた
しみじみ空を見るなんて無くなっていた眼で
それから背後に振り返った
しかし
流れてくるのは知らない顔ばかりだった
空耳だったか
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