おおきなプリン/ただのみきや
か気にしない
むかしのおとこのこたちが
面の皮で恥じらいを隠し買って帰り
家族のちょっと呆れたような視線を
まるめた背中で受け止めながら
おもむろに蓋を開け あるいは
プッチン と 皿の上
あの縦長のやわらかなボディが
むにゅっ と
重力で押しつぶされれば
(きみって意外と あれだね
なんてあたまの中でささやいて
カレー用かと思えるような先割れスプーンで
ふだん隠した嗜虐性を示しつつ
最後まで平らげてはみるものの
かつての喜びや感動はすでになく
甘すぎては
腹にもたれ
同窓会で味わうような
ある種の幻滅に
ただ老けて往くだけの現実に
番茶で口を濯ぐ
粉薬みたいな顔をして
自分のカップに閉じこもろうとする
だがもう手遅れだ
一度プッチンして皿に落ちた
プリンは二度と戻らない
夢を見ていたのだ そう
おおきなプリンの夢を
《おおきなプリン:2018年1月10日》
戻る 編 削 Point(8)