激しければ/こたきひろし
 
雨にも匂いがある
その匂いを嗅ぎながら駅から自宅アパートまで歩いて帰った。さしていた傘が雨に打たれ、その雨音が私の耳に伝わってなりやまなかった。
傘から落ちる雨の滴が降りやまない雨に溶け込んで路上を濡らした。寒くはないが、温かくもなかった夜に
途中で傘をたたんでコンビニエンスストアに立ち寄った。
缶ビールと弁当を買った。成人向けの本買うつもりだったが、レジに若い女の子がいたので恥ずかしくてやめた。
可愛い子だったから、エロ本の表紙を見せてあげたい悪趣味にもかられたが、躊躇した挙げ句に臆病風に吹かれた。

買い物を済ませるとコンビニエンスストアを出た。ふたたび傘を開こうとしたらいつの間
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