血の騒ぎ/吉岡ペペロ
 
こいつらのことを悲しいなんて思いたくない。
岩田は朦朧としてテーブルに突っ伏した。
日田を白田がとめた。
やっぱりこいつらは憐れだ。幾人かにからだを支えられながら、岩田は店をでて、狭いエレベータのなかで、こいつらのことを一瞬でも悲しいと思ったことを消し去りたくて、じぶんの胸を鷲掴んだ。
流血が染みた手から生ぐさい錆びた匂いがする。それは憐れでも悲しいでもない、騒がしい血の匂いだ。




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