ダフネー2/
本田憲嵩
も。その肢体は逆さまになった樹木の蜃気楼として澄ん
だ水面にくっきりと映り込んでいる。妖しく揺らぐ銀色の月。やが
てその汗腺からうっすらと吹き上げる塩からい蒸気が股間の苔むし
た浅瀬の霧と交じり合って、よりいっそう深い緑の芳香を漂わせて
ゆくだろう。そのぼくらの秘密の周囲を取りまくように銀色に輝く
無数の川魚たちが勢いよく飛び跳ねまわることだろう。君という樹
木の体幹。川を下るように君という樹木を下ってゆく――
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