哀しい宝物/ただのみきや
深く より深く 絶望の螺旋を下って往く
愛を語り 愛を信じる者
誘蛾灯で身を焼く音
愛の歌 愛の詩人よ
理想とはこの世に今まで存在したことがなく
これからも存在しないからこそ理想なのだと
誰よりも知っている者たちが織る
日常へ投ぜられた美しい影絵たち
男も女も殺すテロリストだって
メロドラマでホロリとこないとは限らない
琴線なんてどこでも響くし
涙腺なんかいつでもひらく
愛から憎しみへはその日の内に変わる
憎しみから愛は一生でも儘ならない
胸に残る鈍い痛み
ただの燃え滓
いつまでだって泣いたり恨んだり
過去をつまみに酔っていられる
暗黒に塗り込められた自画像 ああ きっと
誰もが目を背けるたくなる そう想いながら
哀しいかな ふと 抱く夢
赤ん坊を抱くように そっと しっかり
再び幸せを 愛を 喜びを
無いものを在るもののように見つめてしまう
人の 哀しい宝物
《悲しい宝物:2017年12月27日》
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