哀しい宝物/ただのみきや
思い出が傷跡に勝ることはない
喜びが悲しみに勝ることもない
その逆を高らかに歌いたいのか
荒れ狂う波を逃れて舞い上がる
喜びの 幸いの 愛の翼を
だが日々萎れて往く切り花のように
全ては古びてほつれ
熱は冷め 泉は汚れ
愛は思索めいた素振りの
空箱になって
各々幻を詰め始める
疑う権利
嘘をつく権利
八つ当たりする権利
罵倒する権利
他人に言いふらす権利
自分の方が正しいと言い張る権利
傷つける権利
やり返す権利
すべて真っ当な論法だと思い込む
始まりが終わりを清算することはない
生が死を終わらせることがないように
もう一度 もう一度と繰り返し
深く
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