或るピアニストに/服部 剛
 
たち昇る
waveのからだの核に
小さな丸い
真空の穴が空いている

旅人の足音は
同時平行の
二重奏

ゆけ

せいれーんは
木枯しの
只中に

 〜
 〜
 〜

mieru

 〜
 〜
 〜

(あの女(ひと)の・・瞳よ)

やがて
全ての物語は
機織(はたお)られてゆく

わたしは生きる

見エナイ宇宙に
繋がりながら
た・た・た・た・んのリズムで

ピアノと
人間は
一つになる

軽やかな限界の線を往く者が
この世の平均台を伝うだろう
両腕の tsubasa をひろげて

   *

今宵、わたしは視る
この夏に旅立った
義父の

右手を  





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