少女と森/あおい満月
 
の森は、緑豊かな楽園だった。それが死者の森に変わってしまうまで。緑豊かな安らぎの森で、心に傷を負った人々が、いつのまにか森に定住してしまい。豊かな森で暮らす人々はやがて社会(外界)を嫌悪するようになり、この森で次々と集団自殺をした。いつからかこの森は、癒しの森から、死の森と人々から忌み嫌われ、放置されたままになっていたらしい。その森を、今、明るく太陽を運び込んだのが私だというのだ。

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私は自分のしたことの偉大さが信じられなかった。森から出た陽のあたる草原で、少女と色々な話をした。少女は歳は11歳だという。若く結婚していたら、私の子供もそのぐらいだろうか。
少女は頭が良かった。少女は思い出したように「帰らなくちゃ」という。母親が待っているのだという。彼女の母親というのも気になったが、とりあえず「またいつか」と手を振り別れた。

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あの飴玉の味が口のなかに残っていた。
太陽はあたたかい。私は、一番会いたい人のもとに帰るために、踵を返した。
私の一番会いたい、あの柔らかな微笑みのあの人のもとへ。


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