滑稽な話だ/
坂本瞳子
放り出された左手は
ゴロンと転がったまま
流血することもなく
その細長く美しい五本の指が
微動だにすることもなく
ただそこにそうしているだけで
いついつまでも眺めていたい
芸術作品のように思われ
そんな欲望が沸き起こるとともに
持ち主はこれを探しているのではないかと
想像するにつけて
笑いが込み上げてきた
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