秘密/ただのみきや
 
少年は秘密を閉じ込める
美しい叔母のブローチをこっそり隠すように
部屋に鍵をかけ 歩哨さながら見張っていたが
閉ざせば閉ざすほど膨らんで行く 妄想は
秘密を太らせるのにはもってこいの餌だった

――もし知られたら 
   知ってもらえたなら きっと

やがてすっかり発酵 ふかふかに焼き上る
部屋ごと膨らんではち切れそう
口を開くたび 甘美で 淫靡な 
秘密が匂い立つようで
ああ鼓動!  内側から激しく叩く
――鍵?  つっかえ棒だけ
そう 扉を開けることができるのは
世界でただ一人 閉じ込めた自分だけ

そんなに時間はかからなかった 秘密は
共有された秘密とな
[次のページ]
戻る   Point(7)