カーネーション/あおい満月
 
だった物語は、
ある一人の可愛い娘が母になり
どんどん太り、家族や家を食べていき
やがてひとりになり、娘は年老いて死んだあと
娘の家のあった場所にハナミズキの樹が生えて
四月にハナミズキが満開になるという話だった
冬の寒いある朝、
突然母が息を引き取った
病院の霊安室で、息子は母にすがりついて泣いていた
こんなに悲しい息子の姿を見たことはなかった
目を失った家は太陽の光を浴びながらも
光を寄せつけなかった
ある日、息子の姿が消えていた
私は驚いたが、息子はこの家になった
この家のリビングのテーブルには一輪の
白いカーネーションが
そっと花瓶に生けてある


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