案山子/dew
私はもう
とうに疲れてしまいました
できるなら
もう
笑うことも泣くことも
話すことも歩くことも
みんなみんな
やめてしまいたいのです
私はもう疲れてしまった
感情の動きに
何かと関わることに
自分の虚しさを心いっぱいに感じることに
そして
許されることに
善人で在り続けられなかった私は
許されることで
安らぎは得られないのです
責められることに慣れず
許されることに追い詰められ
行き場のなくなった私は
直立不動のまま
もう長い間動いていません
帰るところも
行くところもなく
ただ
そこに在るだけ
カラスを追い払うこともなく
回りに育つ生物もなく
枯れた荒野に佇む案山子
その瞳は
何を見ているのでしょうか
幾千の朝を迎え
闇を過ごし
渇いた風に晒されながら
なおもそこに立つしかない案山子は
どうすれば良いのでしょうか
私はもう
とうに疲れてしまっているのです
戻る 編 削 Point(2)