天体/本田憲嵩
 
のような炎星
そのように昨日の情事が次の情事に更新されるまで

   ※

ギリシャ風に白い天体が浮かび上がる
惑星の眠りから目醒めて
閉ざされた睫毛の黒雲が裂かれ
双子の青い衛星が鮮やかに観測される
その時を待つ
不意にレースのカーテンをひるがえして
朝の穏やかな気流が今
その長い睫毛を
吹き払うべき雲としてではなく
黄金の麦穂として
揺り籠のようにやさしく揺らしている
彼女の瞼の奥はもう一つともう一つ
それら青い星だけはでなく
今まさに窓の外で
黄金に輝く
あのひとつの太陽
陽が地平に沈み
やがてこの地球という惑星の約半分が
漆黒のネグリジェを纏うとき
彼女のもう一つの
もう一つの輝く眼は銀の月となる


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