階段の桜/クロヱ
 
肩に降る桃色が 暖かさを感じさせる頃
あたしは 何度目かの再会を果たそうとしていた

また ここへ来てしまった

柔らをつける 薄く甘い香りのアーチを歩く

「おねえさんは どこからきたの?」

あたしの腰元 ふと小さな蕾がつぶやく
目線が並び 微笑みを投げ 応えると
その蕾は花となった

「おねえさん あたしにどこかにているね」

純白の輝く桃色は
または 靄のかかるやわらかい雪と言えるような
懐かしさの中の初心な気持ちを含む
小さな温かい かたまり

そんなものを 抱きしめて この一瞬
泣き出しそうなほど 切ないノスタルジー

本当は
あなたが あたしに似ているのよ
本当は
ずっと あなたより先にここにいたのよ



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