アメジスト/やまうちあつし
この石の中では
絶えず雨が降っている
そう言って一粒の小石を
娘の手のひらに載せた
その人は叔父だった
いつでも青いマントを着ていた
血の繋がりはないけれど
とある出来事があってから
そういうことになったのだった
紫色の輝きの中に目をこらすと
確かに無数の雨粒が
絶え間なく降り続けている
見ていると吸い込まれてしまいそうで
娘はあわてて顔を上げ
男の顔を見た
「その石は私が
ある国に住んでいたときに
偶然出会った物だ
一目見て虜になった私は
それを我が物とするため
あらゆる手を尽くした
あらゆる所持品を売り払い
あるだけ
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