未来へ/こたきひろし
 
胸に抱えたコンプレックス
足元から立ち上る不安と苛立ち

自分が壊れそうになって
産んでくれた人に暴言を吐いた
誰にでもある反抗期だったからな

でも
父親には
怖くて従うしかなかった
死ぬほど嫌いだったのに
顔色ばかり伺っていた

母親の財布からは
何度も金を抜いたのに
一度も咎め立てられたりは
しなかった

気づいていたのか
気づかなかったのか
何も言わないから
それが何だか悲しくなって
自分が嫌になった

孤独に閉じ籠っていた少年時代
体が心を追い越していった

ある日
学校をサボって自宅へ帰ると
母親の乳房を
父親が触っていた

俺は気づかれないように
家を出た
近くの川原に駆けていくと
興奮していた俺は
人目につかない所に身をひそめて
昂る性器を手でしずめた

親なのに
子供なのに
いっそう興奮してしまった俺は
自分自身が汚ならしく思えてならなくなった

川の水で顔を洗う頃には
日が落ちて
空が暗くなってきた

帰るべき家は遠く遠く
離れていくばかりだった



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