今宵その夜/坂本瞳子
 
群衆の中で孤独を覚え
ふと虚しさに襲われる

抵抗する術もなく
笑い飛ばす寛大さも持ち合わせず
気づかないふりをすることもできず
時間だけが過ぎてゆく

なんとなく取り繕うために
空を見つめる

都会の汚れた空気が
せめてもの慰めにさえ思われる

雷のごとくに罅が入る瞬間は
予告なく訪れる

そのときを待っている
孤独に苛まれる夜が明けるのを

膝を抱えて
涙を堪えて
下唇をかみしめて

今宵こそと
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