病と向き合った日/梓ゆい
腕と2本の針をつなぐチューブが
窓から見えるスカイツリーよりも長く伸びているようで
今朝飲んだ1錠の薬が
子供だましのおもちゃに見えたんです。
他の人よりも若く亡くなった父も祖父も
酒を飲み煙草も吸えて
30代半ばの時代を謳歌したのに
私の身体は終わりの無い綱渡りを強いられて
大小合わせたはりめぐる血管には
血液の中を時限爆弾が絶えず流れ続けています。
それでも私には
生きるための目的と取り戻したい物への慕情が
再びあふれ始め
行先への片道切符を求めてもう一度
去りゆく人々の間を潜り抜け
孤独な戦いへと一人
出向いてゆきました。
戻る 編 削 Point(0)