11月18日秋葉原で/ただのみきや
うように
残光の油膜が脳裏を染め
落ちて行った――
炎と煙の中 残されたゴリラは
黒く灰になる魂の向こう側に
真白な空白が広がるように感じた
いま此処に己が違和として存在し
相殺される相手を欠いた以上
ピリオドを打つためには何等かの転位が必要だった
生き残るものは悪
殺されるものも悪
転落死はもう売り切れている
結論は出さない 出さないが良い
放棄せよ 考えることを 放棄せよ
内側へ 内側へ 収縮し 己の核へ
ゴリラは琥珀石となり
蕩けたギヤマンの中で胎児のように時を止めた
それは秘密裏に
大奥の奥の奥 その奥の間へと運ばれた
全身が眼で満ちたお世継ぎを抱いて
顔のない奥方が琥珀を見つめている
《美、醜よりいでて
醜、美よりいづる――》
お世継ぎが笑った
――万の三日月 一斉に
《2017年11月18日》
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