11月18日秋葉原で/ただのみきや
十一月十八日 江戸 秋葉原
野次馬たちの視線を七色に乱反射させ
聳え立つは巨大なギヤマンの壺
その目もくらむ頂上の 縁を走る 影二つ
永久脱毛された花魁姿のゴリラ
追いかける血まみれの巡査
幅二尺半ほどの滑りやすい壺の縁を
追って追われてグルグルと
掴み合ってはまた離れ
もう半時も捕り物は続いていた
太陽はゴッホだったが
巡査はムンクのようには叫ばなかった
すでにサコツもアバラもやられ
マエバを空にまき散らし
ヒダリメもだめになっていたが
《――十一月十八日が殉職記念日になっても構わない
これ以上生きて恥を晒すよりは良い――》
ゴリラと対峙した時そう思った
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