嘘の種/ただのみきや
足跡も足音もない
全てを支えているようで
その実己すら支えていない
宙に浮かんだまま
わたしはわたしを生まなかった
わたしはわたしを創らなかった
枯葉の小舟で
毛虫がせいいっぱいの
背伸びする
大きな魚が上がって来た
大きな鳥が降りて来た
太陽が笑った
月が切りつけた
毛虫はもういない
毛虫はまた現れる
どこかに嘘はあり
どこにでも嘘はある
種のように抱いている
深くも浅くもない
どこか 隠された
火と水が
睦まじく
作用しあうところで
《嘘の種:2017年11月15日》
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