嘘の種/ただのみきや
 
伝えようとした
なんども 白い指先が

――風のすべり台
    すばやくくぐって

  冷やかさ 
    保てず

      触れるや否や
   潤みほどけ

数えきれないくらいに千切れ 空を覆う
 わたしたちは
   わたしという
     何者かの眩暈

翼を持たないわたしは落ちて往く
この性の 重力の中心 あなたへ

火を持たないわたしはあやされる
欹てて あなたの胸の 地獄の業火に

そうして夢中の水脈へと生まれ変わる
汚濁の限り 地に生きて(死んで)

    *

顔のない真実を後ろから抱きしめる
質問はしない 顔は与えな
[次のページ]
戻る   Point(14)