項垂れるということ/坂本瞳子
雨に打たれて風にまみれてそれでも読み続けるなんてことはしない
そしてまた下を向いて歩く
歩きにくいけれどいいじゃないか
立ち止まってはいないんだから
走るときだって項垂れるんだ
サッカーボールを追いかけて
ポチを追いかけて
影を追いかけて
決して踏んづけてしまわないように
前に誰かいるかもしれないって感じたときは
両腕を前に突き出したまんま走るんだよ
いいんだ別に不格好でも
皆の方が避けてくれる
眼差しを足元に向けていれば
転ばなくて済むだけじゃなくて
闘争を避けられる
笑顔にも恵まれないかもしれないけれど
寂しさは忘れたふりをできるから
俯いていれば涙を見られることもない
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