項垂れるということ/坂本瞳子
 
項垂れるとはどういうことか

なにごとにも失望なんてしていない
恥ずかしいなんて思っていない
羞恥心など持ち合わせていないのだろうか

力なく首を前に垂れてしまうのは
いつからだろう
気づいたときには猫背だと人から言われた
その頃はまだ人から話しかけられていた
若かったどころか幼かっただろうに

俯く癖はいつからだろう
転ばないように足元を見て歩くようになってた
空を仰いで歩くと必ず転ぶ
転んで膝を擦りむいて出血して
そんなのは遠い昔遥か彼方の気がする

本は両膝の上に置いて屈むようにして読むんだ
額の上方に掲げて陽の光を受けながら読むことなんて決してない

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