そしてまた大人になる。/
愛心
かい傷口から蜜を滴らせ、とろりと甘くなり、女になった。
少女にはなれず、淑女とも言えない。
ただの女になってしまった。
あの頃の不器用で、不細工で、下手くそな瑞々しさを私は何処に置いてきたのだろう。
あの頃より少しだけ、器用に、綺麗に、上手になった私は
少女の心に流れていた水脈を、いつの間にか塞き止めてしまったのだろうか。
ひたひたと、ひたひたと、
溢れようとする水音を、キスに隠して。
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