記憶がなくなれば永遠になることが出来る/ホロウ・シカエルボク
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硬質ガラスの瓦礫、量子力学の悲鳴…空っぽの巨大な培養液のカプセル、デジタルラジオにはノイズの概念がない、なにも拾えない時間には探しすらしない、「信号がない」と、小さなディスプレイに映し出すだけ、仕事に飽きているウェイトレスのように。冬の夜、僕たちは窓越しに宇宙を見ている、宇宙、無限の宇宙…けれどこのガラスを破ることは出来ない、ただ手のひらをぴったりと押し当てて、自分の呼吸で曇らないように、少しだけ顔を離して、存在しないはずの信号をキャッチしようと試みるみたいに目を凝らすだけ。時々君がこちらを見ているような気がして目をやるとやっぱりその通りで、君は不意を突かれて驚くけれどそれも一瞬のこ
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