極めて人間的/ただのみきや
 
  光は  訪れただろうか――


昔はどこの国にも鬼が住んでいた
山に 廃屋に あるいは屋敷に
山賊のように分かりやすい殺し方はしない
ひっそりと隠れ住み
旅人を泊めて もてなして
夜には殺し 奪い 食らう
そんな人間を鬼と呼んだ
今では鬼とは呼ばないが
いなくなったわけではない

昔の人が迷信深かったわけではない
人外のものとしておきたかったのだ
そして今も――

「あれは人の血が通っていないモンスター」

否 いかにも人間らしい人間以外決してしない
蜘蛛やカマキリだってそこまでしやしない

  人の心には鬼の面
  鬼が被るは人の面
  面はひとつの裏表

――乖離した風船がフワフワ 
         またひとつ網にかかって




                 《極めて人間的:2017年11月8日》










戻る   Point(14)