極めて人間的/ただのみきや
 
意識はふくらみ 肉体から浮き上る
こどもの手に握られた風船みたいに
実体のない 軽すぎるガスで ぱんぱんになった
自我――今にも破裂しそう(でなかなか破裂しない)
が 明後日の風に弄られる

地べたを這う
からだの中には血肉がびっちり詰まっていて
いのちは生きることを止めようとしない
致命傷だろうと末期だろうと最後まで
抵抗し続ける 一つの原理が働いている

捨て去りたいとすら思っていたものを
容易く強奪された時
こころとからだは親密になって 
互いを強く愛おしみながら
漕いだことだろう
すでに滝を 仰向けに 落ちてはいたが

――やがて闇が訪れ 
    
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